月宮殿(げっきゅうでん)・田町組による 「 本朝廿四孝十種香の場(ほんちょうにじゅうしこうじゅしゅこうのば) 」からです。 敵対していた甲斐の武田信玄と、越後の長尾謙信は室町幕府の将軍足利義晴の計らいで、両家和睦のため武田の子息勝頼と長尾の娘八重垣姫を婚約させます。処がその後義晴が暗殺され、その嫌疑で勝頼は切腹させられます。しかし切腹したのは身代わりで勝頼は花作りの蓑作(12歳)として、長尾方に奪われた武田の家宝 「 諏訪法性の御兜 」 を奪いかえすため、武田家の腰元で勝頼の恋人だった濡衣とともに身分をかくし、長尾家に仕官しています。
長尾家の娘八重垣姫(11歳)は切腹した勝頼を慕い、生前の姿を絵に描かせ十種類の名香を合わせた組香をたいて供養しています。同じく腰元濡衣(10歳)も今日は夫の命日と供養していました。
そこへ仕官した絵像そっくりの簑作が登場します。八重垣姫は思わず縋り付きますが、人違いと払われたものの想いは募り、思い余って濡衣に恋の取りなしを頼みます。一途な姫の頼みに濡衣は交換条件として、諏訪法性の御兜を持ち出すならと迫ります。八重垣姫はそのことで本物の勝頼と確信します。
その時父長尾入道謙信(6歳)が現れます。
蓑作に文箱を渡し塩尻峠へ使いに立たせます。謙信は簑作を武田勝頼と見破っていました。
謙信は、すぐに二人の武者を次々と追っ手に出します。先ずは白須賀六郎(8歳)です。
続いて原小文治(9歳)です。 二人は、戦の半ばでそのありさまをさまざまな型で勇ましく語ってみせる 「 ご注進 」 と同様の動きをみせて、観客を沸かせていました!
歌舞伎の姫役を赤地の衣装を着る事から「 赤姫 」 と呼びます。その赤姫の中でも代表的な三役を「 三姫 」 と云います。この八重垣姫、祇園祭礼信仰記の雪姫、鎌倉三代記の時姫です。気品・美しさ・恋に生きる人間味が大きな特徴です。
奥庭狐火の場へ続きます。